TOP50開幕戦詳細報告・最終章
開幕戦予選落ち。苦悩と葛藤なかで、それでも獣道を行く。


                                      
正直、バスフィッシング全盛期を経験してきた自分達世代は、バスを探す能力には長けていても、この「喰わせる」能力を競った経験が少ない。同時にそれを「せこい」「バスフィッシングじゃない」と頭から否定、嫌悪する傾向もある。このトーナメントの喰わせ至上主義傾向に嫌気が差しTOP50、JBを引退していった往年の名選手は非常に多い。JBを経験せずアメリカに挑戦するのもこれが理由の部分も多いだろう。しかしそれは、今のTOP50に出てもこの技術無しにして勝てないことを理解しているからにも他ならないと自分は思う。

そして、自分はこの「喰わせ」の釣りを否定せず、必死でこの数年追及はしてきた。しかし、この喰わせ能力に関して解ったこと、それはスキルを追求すればするほど、道具以上に釣り人の「性格」「気質」が最も影響するという点だ。結局、苦手意識を持つもの、嫌いなことを克服する苦痛は、試合になればなるほど苦痛を伴う。それどころか本来好きだったことにまで悪影響を及ぼしかねなかった。
今回の遠賀川開幕戦はまさにその典型だった。プリプラで様々な攻め手を模索したが全く結果が出ない。たまに結果が出ても確実性がなくギャンブル以外の何者でもない。今のAOY、エリートを狙うには確実な喰わせのベースを作った上で、その安定感の上で攻め手を持つ必要がある。派手な攻め手だけに徹底して拘れば運がよければ年に1~2度、大当てする事は可能かもしれない。しかし、絶対にAOY,エリートを獲得したいと思う選手ならば、一戦でも外す事は許されない。そんな中で今の自分のスタイルはギャンブル性が高すぎ、ならばまずは我慢して何とかベースを凌いでから勝負に出たいと思っても、勝負に出れるほど喰わせ切れず、結局、何も出来ないままに終わってしまう試合がこの2年低迷している自分の最悪のジレンマである。

結局、自分はフィネス最強時代のこの2年、それに抗おうとしつつ、それも克服しようと足掻いていた。バスフィッシングらしくカッコよく勝ちたい、トーナメントから新たなタクティクスを発信し、昔のように一大ムーブメントを市場に巻き起こしたい。その気持ちは誰よりも強いと思う。今の時代、確かに勝つための王道は今の若いアングラー達の釣りが正解なのだろう。トーナメントであっと言う釣りを魅せて、ファンを感動させルアーフィッシングの未知の可能性を追及する場こそが自分のトーナメントだった。


今までにない新しい何かで道の扉を開いてみたい。
遠賀の敗戦後、既に霞でテストを毎日繰り返す。


正直、今の自分は長年のキャリア勘があるがゆえ、今のフィネスな王道を後追いしても自分に勝ち目も夢もない事は解っている。常勝を旨としてきた自分が惨めに負け続けることで、ファンを失望させ、過去の栄光に泥を塗ってまでトーナメントを続けるべきなのか、この2年、何度もそれを自問自答してきた。初日のノーフィッシュ後、正直、もうトーナメントにかける熱意が消えかけていた。もう年齢も50歳を超え、ここまで体と心を限界まで削って試合を続けなくとも、もっと楽にのんびり生きていく道がないわけではない。2日目、3尾目をミスったとき、もう悔しさを感じなかった自分がそこにいた。

決勝の朝は何故か凄く穏やかな気分だった。もう疲れたしそろそろ引退するかな…自分でそう感じていたのだろう。だが、遠賀川は何か自分にとって少し運命的な場所なのかもしれない。

そして、イベント会場に着いたとき、そこは折りしもNBC釣り祭りとの併催で、多くのバスファンが観戦に集まっていた。惨めな気持ちでその中に足を踏み込んだとき、2年も低迷する自分に多くのファンが集まってきてくれた。確かに全盛期に比べればその数は増えているとはいえないが、閉幕まで途切れぬファンのアツい声援と、励ましの言葉を聴きながら延々とサインをしていくうちに、自分はこれだけ多くの人に32年もたってなお、まだまだ期待されていることを強く感じることが出来た。結局、TOP50表彰式が閉会解散しても尚、予選落ちの自分にサインを求めて並んでくれる九州のアツいアツいファンの期待を、自分は引退することで裏切れない、逃げてはいけないという責任感が急激に強くなっていった。
彼らが自分の釣りに夢を見ていること、それはたとえ自分が今の王道に勝ち目がなくとも、誰も行かない藪をこいで漕いで漕ぎまくった末に、「王道」をも上回る究極の「獣道」を見つけることなのかもしれない。
かつて自分は誰もが驚く優勝への最短ショートカット「獣道」を幾度も見つけてきた。それはこれからの厳しい時代、未知のルアー開発なのか、未知の釣り方の追及なのか、過去とは比べ物にならないほど険しい獣道だ。しかしそれに挑戦し探し続け、試合で証明することが自分のスタイルなら、これからいくら負け続けようとも、必ず誰も知らない、誰も通ったことがない「ルアーの獣道」をまた絶対にもう一度見つけるまで諦めないつもりだ。そのために自分はトーナメントをまだまだ諦めない。


負けても負けても、続けていれば必ずチャンスはまた来る。


九州の皆さん、応援ご支持、心から感謝いたします。

 

 

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