TOP50開幕戦詳細報告・第2章
自分スタイルの攻め手は見つけられず、平凡極まりないスタイルに…。
この2尾が自分の喰わせの限界だった。


                     
その不調の本当の理由は、ずばり、今の時代のフィールドコンディションが自分の持ち味、自分のスキルを活かせる状態とはあまりにも乖離してしまったという点にある。自分の20~30歳代での強さの根源は、人が見つかられなかったバスや場所をダレよりも先んじて見つける勘のよさと、その勘を徹底した誰もが嫌がる地道な作業を延々と続け見つけ出す執念にも似た能力に長けていたからに他ならない。記録紙魚探の高速解析制度に気がつき誰よりも先んじて取り組んだ琵琶湖の漁礁暴きや霞北浦の隠れオダ探し、徹底したルート・コンタクトピンの発見、ウィードのハゲ、エリ跡、沈船、真冬に竹竿で湖底を小突いてまで見つけたブラインドアンカー直撃術で圧倒的な結果を残し続けてきた。
そして、このストラテジーは30代後半には誰もが真似をし、トーナメントの絶対戦略となり、同時に一瞬で周囲50mを一斉3D探知できるサイドイメージや3Dスキャナーの登場で、真冬に何日もかけて行った地味忍耐我慢の執念の作業は平坦な遠賀川程度では3日もあれば全域椅子程度の沈みものまで完璧にスキャン完了。琵琶湖や霞も1日200L使ったガソリンで何年もかけて作った完璧な浚渫漁礁の湖底図が、いまや南湖、北浦レベルなら1ヶ月は必要ないだろう。時代の進化、電子機器の進化、バスプロという職業の定着で、知られざるスポット発掘のアドバンテージで勝てた時代、ピンスポットの時代は10年前に完全に終わった。


良くも悪くも3D立体サイドソナー、3D立体360度ソナーの登場は、トーナメントレイクの水中を誰でも簡単に短時間で丸裸に出来るようにした。


そこで自分が次に考えたことが、誰もが気付いていない破壊力を持つルアーの「個の力」を見つけることだった。古くは琵琶湖年間全試合優勝の立役者「マッドペッパーマグナム」に始まり河口湖で衝撃的優勝を果した「スラッゴー」、釣り方の革命として始めて常吉リグをトーナメントにもちこみクラシックを制した「ミーとヘッド」のダウンショットリグ、水面波動系の大ブレイクを起こしたTOP50サメウラ制覇の「ビッグバド」、初の遠賀戦を予告優勝した最強ジャークベイト「スーパースレッジ」、つづく遠賀川で公開し連続表彰台を獲得し大ブレイクした「ファットイカ」、遠賀野護岸並行巻きまくりで表彰台常連となった元祖巻きシャッド「ワスプ55」、再び震災直後のサメウラでの感動の優勝をもたらした「ジャバロン&イーター早巻き」、高梁川で偶然生まれトーナメントを席巻した奇跡の千鳥「モグラチャター」、そのチャターのブレードをスピナーベイトに移植しTOP50霞戦で準優勝、その後、霞、遠賀戦上位常連となっている「ジンクスミニスーパーブレード」、旧吉野川のクラシックで3位に入り大人数の試合でもビッグベイトで勝てる可能性を示した「アンドロイド」I字サスペンド釣法など。

これが自分が場所のメリットを失った後も、勝ち続けられた「ルアーの力」の発見である。しかし、ルアーもそのルアーが個性的でパワーがあればあるほど、流行してみんなが使えば一気にバスの反応が悪くなるのも特徴だった。試合レベルで通用する強いルアーはそれだけバスの学習も早く人間への流行も早いのだ。故に逆もまた真なりで、必ずバス業界では大ヒットしたルアーの逆のコンセプトを他メーカーが謳い出すお決まりパターンがある。「硬い竿が流行れば反転させる喰いこみ竿」「イレギュラーダートの後に只巻き」、「千鳥のあとにアンチ千鳥」、業界商売パターンの典型だ。ただ、この逆パターンは、強力なルアーを使う人が急激に増えた後に実際に反動で起こる現象で、バスの本能を刺激する釣りと言うよりは、プレッシャーにおびえたバスを「喰わせる」フィネステクニックである。


エサをも凌駕するルアーの力で試合に勝つ。
バドやモグチャの「千鳥」が、場所ではなくルアーのもつ未知の可能性を気付かせてくれた。


自分が勝てなくなってきた本当の理由。それはこの2つの「出し抜く戦略」がもはや場所もルアーも出尽くした上、トーナメント開催地が毎年同じ所でしかできないことに起因している。もはや場所もルアーもパターンにも、シークレットがないのだ。たとえば今回の遠賀川、既に何度も何度もTOP50が開催され、ピンもパターンも、バスが確実にいる場所もほぼ全てのプロに熟知されている。では何が勝敗を分けるのか?それは紛れもなく誰もが知る場所で、誰もが使うルアーで、そこにいるがプレッシャーで反応しないバスを「喰わせる」能力の差の勝負になる。

近年の若手選手は、喰わせ能力に圧倒的なスキルを持つ選手が多い。というか、それが今の試合の王道中の王道なのだ。遠賀川ではもはや同じピンスポット、それも1m四方の小さな沈み物までほとんどの人が熟知している。そして、普通に喰ってくれるバスは公式練習の2日間でほぼほぼ完璧に抜かれてしまっている。一見、地元アングラーから見れば、試合中メジャースポットが意外にガラ空きに見えるそうだが、それはTOP50と言う普通ではない試合に出場し、そこを釣ってみて初めて何故そこがガラ空きなのか知ることになるだろう。その時はもはや手遅れだが。


しかしそれでも現TOP50のトップランカーは、そこから1尾を搾り出せる釣りの達人なのだ。もうそれはルアーフィッシングではなく限りなく「エサ釣り」の姿に極めて近い感覚がある。同じ正解のリグ、同じルアーを同じスポットで同じように使っても、喰わせ方の上手い下手によって結果に大きな差が出るのが今の時代なのだ。
今のTOP50には「バスフィッシングが凄い」選手よりは「魚釣りが上手い」選手が極めて多い。言い換えれば今のTOP50にバスの居場所や地形的ピンスポット、ダークホース的ルアーを探しだす力はもうあまり価値を持たない。判り切った確実にバスがいる場所で、確実に喰わせる能力に秀でる、それが今のTOP50生き抜く絶対的なスキルなのである。


知られざる場所探しの時代、未知のルアーの力の時代、そして徹底した喰わせの時代へ、
今の時代を劇的に変える次は何なのだろう。


ただ、自分はこの現状を否定するつもりはない。「喰わせる能力の差」それが今のTOP50で生き残る上位への無駄のない最短にして最速の「高速道路」であり、それが今の時代の絶対条件である事は紛れもない現実だからだ。

…最終章へ続く

 

 

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