TOP50第2戦霞北浦戦閉幕
微妙な順位に終わったTOP50霞北浦第2戦。
優勝が見えていただけに悔しさが残った・・・。
(総合順位http://www.jbnbc.jp/_JB2012/view_result.php?t_id=10020



TOP50第2戦北浦水系が閉幕した。
初日22位と完全に出遅れながら、2日目に4キロ越えをマーク、初日の上位陣が崩れる中で優勝を狙える絶好の予選4位につけ決勝を迎えた。
しかし、29年間も現役トーナメンターを続けながら未だに甘い「昨日」を捨てされない自分に呆れ果てる悔しい総合12位と平凡な結果に終わった。


3年連続2日目まで優勝に絡みながら、悔しい結果に終わる霞北浦戦。
次こそは絶対にここで勝利をもぎ取りたい。


今試合、自分がメインとしたのは減水傾向が続いていたことから北浦本湖の比較的水深のある2.5m前後のハードボトムに絡む杭やロックハンプ。それを斥候としてスケブロ7、ジンクスSB、2手目の縦スト絡みにはアベラバ2.7g&エリートクロー3インチ。そしてバックアップの3手目であるフラットハードボトムにはエリートクロー3.5インチのヘビキャロを用意して臨んでいた。


北浦本湖で圧倒的に効いたエリートクロー3.5インチ。
この絶妙のサイズ感がキモだった。


初日は最も避けたかった天候となった。台風一過の影響かほぼ1日全くと言っていいほど風が吹かず、猛烈な暑さとなったため、巻きモノ、フラットは機能しなくなった。数少ない杭のサスペンドをアベラバ2.3gとセクシーアンクルNSを使い必死で凌ぎ22位。


初日は3尾ながらビッグフィッシュに救われ22位。
メインパターン温存だったので、巻き返せる自信はあった。


そして2日目は待望の南東の強風、そして雨によるローライト。ジンクスSB1/2oz、エリートクロー3.5インチヘビキャロを使い八幡沖フラット3か所でリミット達成、鉾田エリアでアベラバ、セクシーアンクルで3尾を入れ替え、50アップを含むこの水系ではビッグウェイトと言える4400gをマークし3位、大きく順位を捲り上げ予選を4位で通過した。


2日目、エリートクロー3.5インチヘビキャロで仕留めたこの50アップで一気に4キロ越え。
22位から予選4位までジャンプアップ。


もう1日、この時期最も多いはずの南東風の曇天、もしくはやや曇りがちの天候が続いてくれる事を願ったが、無情にも決勝ではこの時期滅多に吹かない晴天の北西風。しかも大雨にもかかわらず水門開放がなく、水位が20cm以上アップ、減水傾向が初めて増水へと転じた。2年前と同じく2日目とはまたしても真逆の状況となってしまった。


もう1日、南東風が吹けば、絶対の自信があった。
しかし、無情にも風か全く逆方向から吹き、パターン崩壊・・・。


トーナメントにおける甘い記憶はまさに魔性の女と同じだ。絶対に行ってはいけないと頭で解っていても、心は無意識の内にそちらを向いてしまっている。
奇しくも2年前の霞北浦戦の再現となった決勝の朝、同行のワタナベに「今日俺が昨日の北浦本湖パターン全部捨てて下流の護岸水門パターンへシフトしたらビックリするやろ。」と何かを期待して問いかけた自分がいた。

霞北浦水系では下流部に当たる鰐、常陸エリアは川幅が狭く天候変化に強い。そのためバスのサイズこそ広大な北浦本湖よりかなり落ちるが、バスの濃さ、釣り易さでは確実に上回る。そしてこの状況を想定したこのエリアでの練習を十分に積んできた。
ワタナベはしばらく沈黙した後、「最初はやっぱり昨日の場所は見に行った方が良いんじゃないですか…」と複雑な表情で答えた。
それに対し「やっぱりそう思うわな…朝一は見に行くべきやな…それでダメやったら捨てればいいか…でもホンマはこの風やったら鰐か常陸が正解やで、たぶんな…」
そう同意した自分の心に既に「魔」が差していたのだろう。
昨日の甘い記憶と、論理的に考えた未知の場所を天秤にかけた時、冷静に読みを優先し、それを常に成功させてきた選手等、自分が知る限りいない。


この季節には珍しい北西の強風が全てを変えてしまった。それを解りながら自分は変われなかった事が敗因だ。


朝一番だけ…そう考えた時点で既に負けていたのだ。広大なこの水系で僅か5時間足らずの決勝。初手の失策は致命的だ。未練はさらに増強され、思考を固着させ、全てを後手に回す負のスパイラルが始まる。

約35年バス釣りをしてきて、バスフィッシングが上手い奴、天才、鬼才には何人も出会ってきた。しかし、本当にトーナメントで強い奴は釣りの才能以上に、「メンタル」の根底に並みの釣り人とは異質なオーラを感じさせる。
しかし、そんな数少ない「強敵」をもってしても、最新最強の装備を駆使し年間300日にも及ぶ釣りの経験をもってしても、今の時代、TOP50の決勝で1尾のバスを確実に釣る事は容易ではない。その理由が身を持って解るようになった時、生き物を相手にした「釣り」と言う不確かな競技の深淵に初めて触れる事が出来る。


まだ捨てる物がない故の強さか、それが出来る数少ないプロの一人が馬淵だ。
今回3位入賞のすべては今月号バスワールドTSRにて詳細に公開。


トーナメントを続ければ続ける程、「今を釣る(FISH THE MOMENT)」ために「昨日を捨てる事」の難しさを痛烈に感じる。そして釣りの技術以上にキッパリ「捨てる事」こそ、「現代」のトーナメントにおける究極の「奥義」のようにすら感じる。達成したい目標が高ければ高い程、守るべきプライド、責任が重くなればなる程、トーナメントは選手を金縛りのように雁字搦めにし、その選手本来の判断力を奪っていく。
昨年、驚異的な戦績を誇った福島、青木でさえ、それは例外ではない。


馬淵が今試合、最も多くのバスを手にしたカーリーゴビー3インチ。
使い方の詳細はバスワールドにて。
カラーは「沼エビブルーフレーク」(シナモンブルーフレーク)が絶対だったらしい。


10数年ほど前、帝王リック・クランが禅の修行にトーナメントの活路を見出そうとした事があったと聞いた事がある。今はそのリックの気持ちが少し解る気がする。日本には「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という諺がある。ある意味、極限まで煮詰まってしまった日本のトーナメント競技を生き抜くために最も必要な事は、小手先のテクニックなどではなく、この諺に全てが集約されているかも知れない。
今試合、またしても同じ過ちを繰り返してしまったが、それは決して円環ではなく、絡み合い、それでも前へ前へと進む螺旋の歩みと思いたい。             


この2戦、見えていながら今一歩噛み合わない悔しさが残る。
思い通りにいかないからこそ、本気になれる。


これで2試合を消化し今季の目標であるA.O.Y獲得には赤信号が点灯した。それでも昨年の地獄を思えばまだ年間優勝に僅かだが望みは残る。残り3戦、この悔しさを胸に全て表彰台を獲得する気で挑む。龍の年、波乱の結末を信じて。

 

 

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