こんにちは、ルアーデザイナーの長井です。
今年の1、2月の寒さはとても厳しく、このまま氷河期に突入するかと思う程の勢いでしたが、三月に入り一気に春めいた気候になってきました。
気温の上昇と共に、そろそろフィールドへ向けて、動き出す方も多いと思います。
さて、早いところでは、今週あたりには店頭に並んでいるであろう、潜行レンジ1.5~2.0メーターをカバーするGEKIASA III IK-JERK。
| GEKIASA III IK-JERK
全長130ミリ
重さ21グラム
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昨年末、潜行レンジ70センチのGEKIASA III COMPLETERの開発段階で、取材の数日前、突如今江さんが、レンジの深いタイプが欲しいと、このGEKIASA III COMPLETERにロングリップを着けてくれないかと依頼を受けたのが始まりでした。
金型を修正する時間はあるわけもなく、私はGEKIASA III COMPLETERを突貫工事で改造し、GEKIASA III IK-JERKの原型となったプロトタイプを数個作成し、今江さんに渡していたのです。
| GEKIASA III COMPLETER(上)と
GEKIASA III IK-JERK |
このプロトは、GEKIASA III COMPLETERのモデルを、無理矢理ジャークベイトとしての機能を当て込んだために、ただ巻きアクションとジャーク時のダートアクションは良かったのですが、キャスト時のウェイトバランスが悪かったために、全く飛ばないというモデルだったのです。
年が明け、このプロトは、薮田プロの手に渡りテストして頂く事になり、雪のちらつく1月初旬の七色ダムで、いきなり結果を出してくれたのです。
その数日後、琵琶湖湖畔に帰省してきた薮田プロは、琵琶湖でも結果を出すことに。
その後、リップと内部構造は幾度となく改良が加えられ、現在の形へと洗練されていきました。そして今回、キャストのし易さと飛距離を求めて、重心移動ボールとして磁着タングステン球を、そして、重心移動ボールを固定するためのマグネットに、ネオジウム磁石をイマカツで初採用しました。
これまで、磁着タングステン球とネオジウム磁石を使用するノウハウは、イマカツには全くなく、開発するにつれていくつかの課題が発生し、その中の一つに、ネオジウム磁石の磁力の選定がありました。
バス用ルアーの中でも、特にジャークベイトは、トゥイッチングやジャーキングを頻繁に行うため、ネオジウム磁石の磁力が弱いと、トゥイッチングやジャーキング時にタングステン球がネオジウム磁石から直ぐに外れてしまい、外れたタングステン球がボディ最後尾(キャスティングポジション)に移動して壁面にヒットする事で「カチンカチン」と強烈な音を発してしまうため、バスをスプークしかねません。
| 重心移動ボールの
キャスティングポジション(上)
スイミングポジション(下)
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| ネオジウム磁石の磁力が弱いと
軽いトゥイッチでさえも
タングステン球がボディ前後方向へ
行ったり来たりしてしまう。
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また、トゥイッチングやジャーキング時に、タングステン球がネオジウム磁石から簡単に外れることで、ダート性能は良くないばかりか、タングステン球がテイル側に移動し、テイルヘビーになり易いことで、水中でのルアー姿勢が安定せずに、潜行レンジが浅くルアーが水面を割ることもありました。
逆に、ネオジウム磁石の磁力が強すぎると、キャスティング時のフルスイングでさえも、タングステン球がネオジウム磁石から全く離れず、飛距離が出ないという結果に。
ネオジウム磁石の選定は、キャスティング時にはタングステン球がネオジウム磁石から難なく外れ、トゥイッチングやジャーキングでは、タングステン球が、ネオジウム磁石から安易には外れにくい磁力を探し出すという、試行錯誤を繰り返す事でした。
| ネオジウム磁石
直径や厚み、磁力の違いによって、
大小様々なタイプが存在します。
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イマカツには既に発売されているダルド115があり、GEKIASA III IK-JERKと近縁にあたるジャークベイトですが、GEKIASA III IK-JERKに比べ体高は低くスリムになっています。これは左右のダート性能に特化させるために、水の抵抗をできるだけ抑える為の形状になっているのに対して、GEKIASA III IK-JERKは、ダルド115の約1.2倍ある体高にしているために、左右のダート幅はダルド115には及ばないものの、ダート時の水押は大変強く、ビッグベイトに匹敵する集魚パワーを備えています。
| GEKIASA III IK-JERKとダルド115(手前) |
また、GEKIASA III IK-JERKは体高があり、ボディ側面をフラット形状へと強調させたため、ルアーアクション時の明滅変化が激しく、フラッシング効果はより高い仕様になっています。
GEKIASA III IK-JERKは、通常のサスペンドジャークベイトのように、浮力の少ないルアーに有りがちな、スイミングアクション時のもたついた、メリハリの無いアクションは一切なく、ステディーリトリーブでは、ローリング6:4ウォブリングの割合で、バランスの取れたスイミングアクションを起こします。
イマカツでは、用途に合った様々なジャークベイトをラインナップしていますので、各フィールドの状況にあったアイテムを探してみてはいかがでしょうか。
それでは皆さん良い釣りを
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