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ルアーと板金塗装
こんにちは、ルアーデザイナーの長井です。

5月の気候は朝夕肌寒く昼間は少し汗ばむほどで、1日の気温差が大きく体が中々順応していけず体調を崩す事も多い季節でもあります。

気が付けばゴールデンウィークは終わり、長い休みの為か新社会人や新しい職場になった方は5月病にかかっている人も居られるかと思います。

そんな気分の晴れない毎日を送っている方は週末にバス釣りなどしてみてはいかがでしょうか、もしかしたら新しい世界に開眼するかもしれませんよ。

ここを読んでいる方はバス釣りを通し、充実した週末を謳歌している方が多いと思います。

さて、皆さんは過去に良い思いをしたお気に入りのルアーを持っていますか?


ポップRとスピットシャッド


魚を釣りすぎて歯型だらけになったルアーを眺め、過去の思い出に浸ってニヤついている事もあるかと思います。

ルアーボディに付いた数々のキズだけであれば、そのまま現役で使用し続けても支障はありませんが、リップが折れたりボディが欠けたりしてしまっていてはそのルアー本来のポテンシャルは発揮出来ず魚は釣れません。

私は過去に私物のルアーや仕事に関わった壊れたルアーの修復を行ってきましたが、修復方法を調べ極めていくうちに、新品同様に修復する車の板金塗装に類似する点が多い事がわかり、板金塗装技術に大変興味をそそられ、接触事故で出来たであろう車のバンパーやボディの擦りキズやヘコミ、それらを新品に見違える程の修復技術を持っている板金塗装職人に尊敬の念を抱いた。

下地の作り方、塗料の調合、スプレーガンのテクニック、そのほかにも高度なテクニックが存在するようですが工程自体はルアーの修復と略同じであったため板金塗装技術は大変参考になりました。

先日の出来事なのですが、近所の知り合いが車のバンパーを壁に接触してしまいキズだらけになってしまったと言うことで、どこで知ったか知らないが私が修理出来るという噂話を聞きつけ、突如車が我が家に持ち込まれた。

その車を見てみるとフロントバンパー左側面に、熊の爪にでも引っ掻かれたかのような見事なキズが数十本入っていてタイヤに近い側面は深さ2ミリ程エグレテいた。


傷だらけのバンパー。


「専用設備の無い我が家に持ち込まれてもね~」と思いましたが、以前から車の修復をしてみたかったこともあり快く引き受けた。

よく、カー用品店の修理コーナーに置いてある車の修復方法の書かれた画像入りのパンフレット、車の修復に使う工具、スプレー缶、タッチアップペン、マスキングの方法など事細かに書かれている修復の教科書とでも言っておきましょうか、必ず画像入りで修復のビフォーアフターが載っている手帳ほどの大きさの説明書。

キズやヘコみで無残な修復前と新車に見違える程の修復後の画像、本当に缶スプレーのみでここまで元通りのなるのかと疑ってしまうのは皆さんも同じではないでしょうか?

私もその一人であり一般人に出来るものかと皆さんを代表してトライしてみた。

必要工具はこんな感じです。

耐水ペーパー180番、320番、600番、1000番
耐水ペーパー用パット(耐水ペーパーに取り付ける硬質スポンジ、これを使うか使わないかで仕上がりに差が出ます)
カッターナイフ
水を張ったバケツ
ポリパテ
サーフェーサースプレー
ボカシ剤スプレー
シリコンオフスプレー
バンパープライマースプレー
車体カラーのスプレー
トップコート用のクリアースプレー
マスキングテープ
新聞紙

まず、車を軽く洗車して乾燥させます。
擦ったバンパーのバリをカッターナイフでカットし、耐水ペーパーの180番を耐水ペーパー用パットにセットして耐水ペーパーに水を付けながらキズとキズの周囲の塗装面を削ります。

次に600番の耐水ペーパーを使い180番で荒削りしたバンパー面を少し整えます。


ペーパー掛け。 


キレイな水を掛け研磨面に付着している磨きカスを落として乾燥させます。

シリコンオフスプレーを研磨したバンパー周辺に吹き付け乾いたウエスで拭き取ります。


油分を取るためのシリコンオフスプレー。


そして次の工程で使うポリパテとバンパーとの密着を良くするためにバンパープライマーを薄く2~3回に分けて吹き付けて乾燥させます。


難易接着素材のバンパーにはバンパープライマーを必ず吹き付ける。


ポリパテを良く混ぜて気泡が入らないように薄く盛ります。


黄色い部分がポリパテを盛った部分。


乾燥後、320番の耐水ペーパーで磨き次に600番の耐水ペーパーで整え仕上げに1000番で滑らかに磨きます。

磨き粒子を洗い流し、乾燥後シリコンオフスプレーを吹き付けウエスでふき取り、磨き面にバンパープライマーを薄く2~3回に分けて吹き付けて乾燥させます。

磨き面よりも少し大きくマスキングテープと新聞紙を使いマスキング処理を施し、バンパーの黒地とポリパテの色が隠れるまでサーフェーサーを数回に分けて吹き付けて良く乾燥させる。


サーフェーサーを数回に分け塗り重ねていく。

マスキングはサーフェーサーが完全に硬化する前に外します。


サーフェーサー処理後
うっすらとサーフェーサーとボディ色との境目が見えると思います。
今回、車のボディ色がホワイトの為白色のサーフェーサーを使用しました。


サーフェーサー乾燥後、耐水ペーパー1000番を使い水磨きしていきます。


1000番耐水ペーパーの研磨後。


研磨面の汚れを洗い流し、乾燥後に細目のコンパウンド使い、バンパーにカラーリングする箇所よりも広めに磨いて良く拭き取る。

研磨面にシリコンオフスプレーを吹き付けウエスできれいに拭き取る。

バンパー以外をマスキング処理します。

カラースプレーに入る前に、カラースプレーする箇所より広めにボカシ剤スプレーを吹き付け、ボカシ剤が乾燥する前にカラースプレーを数回に分けて吹き付けていく。

ボカシ剤の効果は上塗り塗装が均一な膜を形成し、塗膜のザラつきを抑えてキレイな仕上がりになります。


塗膜のザラザラを抑えるボカシ剤スプレーは必須です。


カラースプレー乾燥後、トップコートのクリアーを数回に分けて塗り重ね、一週間後にコンパウンドで磨きワックス掛けして完成です。


クリアー処理後。


乾燥時間も含め6時間ほどかかりましたがいかがなものでしょう。

修復は耐水ペーパーでのバンパー荒削りからポリパテ削りの下地作りで9割がた仕上がりが決まります。

下地をいかに上手く滑らかに作るかが大きな鍵を握っているようで、後は缶スプレーの吹き付け方と塗装面との距離、缶スプレーを持った腕を左右に動かす時、塗装面と平行にスプレー缶を動かすのではなく左右のエンド付近では塗装面から離し気味に、要は缶スプレーを持った腕を扇状に動かす感じ、そして一気に厚く塗るのではなく薄めに何回かに分けて吹き付けることが上手くいく方法です。

インディーズ系ルアービルダーの方の中には、ユーザーが使用して破損したリップやクラックの入ったルアーのリペアを受け付けているビルダーの方もおられ、新品と見違える程の修復を行ってくれます。

もちろんそのビルダーの方の所で購入されたルアーに限られますが、嬉しいサービスですね。


ようやく型が上がってきました。
最後の詰めに入ります。


それでは皆さん良い釣りを

 

 

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