K.imae Today's Tips 2483『青木 哲が語るロデオライドリバーバー“アンセム 61 UL-M”』
TOP50プロの中でも屈指の実力を誇る三原プロのサイトフィッシングの軸となるロッドです。 三原プロの今現在のロッドに足りていないものを聞くと ”大きなバスを掛けてから取り込むこと” 圧倒的にバットパワーのあるスピニングロッドにしてほしいと言う事でした。 キーパーを稼ぐためのスピニングではなく、 ひたすらに超ビッグフィッシュを獲るためのスピニングロッド と言うのが彼の根底にあるスピニングコンセプトなのです。 最初は私も20年のロッドビルディングの経験と知識とテクニックを使えば どうにかなるだろうと、三原プロの言う通りに単純にスピニングロッドの ミディアムライトのブランクスにショートソリッドのエクストラウルトラライトの ソリッドティップを継いだファーストプロトを完成させました。 その竿は、極端な先曲がりのテーパーを描く竿でしたが、 三原プロは “いいんですけど、もうちょっとなんとかパワーを!” “指先の延長線の様な感覚で動かせる様な竿になりませんか?” とここから戦いが始まりました。 三原プロの要望は、今までの既存の常識範疇ではもちろん存在しないロッドでした。 指先の延長線上の感覚で動かせるというロッドは既に存在してました。 それは今江プロのプロトロッド噂の”ポッキー”です。 しかし”ポッキー”は素直な竿でこれぞ超高感度チューブラーブランクスの究極 という竿なので、三原プロのリクエストのパワーとは違う方向のロッドです。 そこで、私の長いバスフィッシングの記憶の中から出てきた竿は、 皆さんも覚えている方もおられると思います(知っている人はおっさんです)。 それは ”TEAM UEDA PRO4 SSS” です。 そのロッドは ”スプリットショットスペシャル” です。 昔タックルボックスというバス雑誌(廃刊になってしまいました)に UEDAのロッドのコーナーがあり夢中になって読んだものです。 そのロッドのシリーズの他のモデルはワンピースなのですが、 ”SSS” だけなんと当時のトーナメント全盛時代に反するツーピースだったのです。 ツーピースといえばまず持ち運びの便利なオカッパリロッドと言うイメージが浮かびますが、 “なぜ一流のトーナメントプロが敢えてツーピースデザインにしたのか?” それがヒントになりました。 それは通常ブランクスを一本で焼くとある程度曲がりのつながりを気にして設計されています。 もちろん補強のカーボンを巻くことである程度は曲がりをコントロールできますが、 ツーピースだとバット部分とティップ部分を完全に別で作れるので、 曲がりや硬さを簡単に変えることができるのです。 そのツーピース理論を採用した竿を自分用に作って以前から使っていたものがあり、 三原プロに見てもらうとアッサリと ”ツーピースでOKです” と言ってもらえて、 開発は次の段階へ進む事が出来ました。 ここにも既存のカタチや常識に囚われない三原プロの才能を垣間見ました。 三原プロの要望のバットパワーを出す方法としては、ブランクの肉厚を上げる、 しかしこの方法では極端に重くなってしまいます。 もう一つの方法はブランクの直径を太くする、こちらを採用しました。 ”マグナムテーパー”または”ハイテーパー” といわれるものです。 この製法にすると手元に向かって太くなるので持ち重りが少なく操作感がとても軽くなります。 最終的に極端な見た目になりましたが、この製法でバットパワーと軽さを克服しました。 さらにバットの外径が13mmになったことにより 富士工業のリールシートVSS(内径13mm)と相性が良くなり 軽さと操作性のダイレクト感が出る様になりました。 オリジナルのグリップデザインもアクションしやすく、 2キロを裕に越える巨大なバスとのやりとりも不安なくできる様にデザインされています。 ここからが、実は大変でした。 選手主体の開発という体制をとっていないメーカー以外では なかなかできない作業だったでしょう。 一応私もTOP50選手なので理解できたのですが、いろんなことを理解するために、 同じブランクで作った竿を試しに使ってみたりもしました。 問題はソリッド部の硬さと長さです。 これに関しては素材弾性を調整し、0,1mm単位の調整を幾度となく重ねていきました。 がしかし三原プロと全く同じ感覚を持てるはずもなく、 最後の問題が「ワームアクションの2回目のトゥイッチでソリッドの 穂先がブレるのでなんとかして欲しい」でした。 この常人ではまず感じ取れないほどの「神感覚」こそが まさにサイトの達人ならではの拘りであり、 バスの鼻先で超軽量ルアーに命を吹き込む絶対的な性能だったといえるでしょう。 それはソリッドをやめてチューブラーにすれば簡単に解消できるのですが、 それではノーモーションで「ピッと刺すように投げる」 この竿独特の超軽量ルアーのキャスト精度を犠牲にしてしまいます。 悩んだ末アジングロッドによく使われているあまりバスロッドでは使われていない 極小ガイド ”T-KTTG 3” をティップ部に採用しました。 そうすることにより喰わせの決め技でもある、 超ショートワンツートゥイッチの穂先のブレが解消したのです。 このようにして三原プロの自信作、 極限の繊細さと操作性を持つ超極細ソリッドティップ、 そして2キロを越えるバスを悠々といなす極太のバット、 構造上業界初のスリーピーススピニングともいえる RODEO RIDE RIVIVEWER Anthem” は完成しました。 |