K.imae Today's Tips 1633『カルピスアベンタの秘密』
事の始まりはコイツ。 シカキングが使いまくりすぎて骸骨みたいに剥げまくった初回出荷のアベンタ。 この当時は通常ルアーに使われるABSボーン樹脂ではない、 アベンタ専用に選んだ樹脂を使ってました。 ところが、この樹脂、何故か半端なく塗装が剥げ易いことが発覚…。 特に初回ロットの中心だった黒のベタ塗り「ブラックデビル」が致命的なほど剥げマクリ…。 白系や透明系、下地に箔張り系は問題なし。 しかし、クレーム多発で急遽、全て安定の ABS透明樹脂とABSボーン樹脂に次月から変更するハメに…。 本当に謎でした。 昔、タライロンの一部カラーでも使ってる樹脂なのに、そんなトラブル一切、なかったのに…。 ところが、そのズルムケ骸骨アベンタが、やたら釣れると シカキングが大絶賛し始めたからややこしくなる事に…。 三原がシカキングをガイドした折にも、三原をして 「コレ、明らかに違いますね」「シェルラミと対象的かも」と絶賛…。 その理由は解ってましたが、「だって素材が根本的に違うもん」とスルーしてました。 だって、あれから塗装剥離の解明にかなり試行錯誤したけど、やっぱ塗装乗らないんですわ…。 全然…売りもんニャなりません。 明らかにプラスティックメーカーが何か成分変えたとしか思えないほど。 ま、商社で17年間、樹脂扱っていた経験から、毎月、 100トン以上も樹脂成型する大手家電メーカーの要望で、 樹脂製造会社が物性調整するのは良くあることで。 弱小ルアーメーカーではその原料を元の物性に戻せなんて文句言えません。 それでもシカキングがやたら「最初期樹脂のアベンタ」が 欲しいと言うもんで、試しに完全無塗装のアベンタを作ってやることに。 コダワリのシカキングは、羽根も僅かにオリジナルより軽い 「アルマイトカラー羽根」を追加でご要望。 黄色味がある乳白色で透明ABS樹脂より硬くて僅かに比重が軽いABSボーン樹脂より、 更に比重が軽くて硬く、透ける様な白さの樹脂なんで「カルピス樹脂」と命名。 友蔵君が喜びそうなシモネタカラーでも良かったんだけどね。 そんでもって、シカ君、友蔵君他数名に送ったところ… めんどくさい人がさらにめんどくさい事件を起こしてしまいます…。 琵琶湖で、2馬力レンタルで、いきなりスーパーな ロクマルオーバーをカルピス君で釣ってしまう始末…。 いや確かに良いのはわかってんだけどね…。 樹脂も羽根も軽くて、硬いんだから、あたりまえだのクラッカー。 めんどくさいことになりましたわ、ホンマ。 今でも十分、アベンタは戦闘能力抜群のド定番確定のビッグクローラーベイトなんですけど。 そんでもって、それから数ヶ月… やっとの思いでカルピス君に塗装が乗るようになりました…。 そしてウキウキ気分で金砂湖ロケで最終確認、 しかし、結論は… 全然、アカンがな… 大ショックなことに、塗装を強化するために色んなプライマーや塗り方をしたために、 塗膜が厚くなってしまいコーティングと併せるとボディートータル重量は ABSボーン樹脂と同じになってることが発覚…。 スーパー意味なし番長炸裂で、失意の初日丸ボーズ… 泣き面にスズメ蜂がマジで襲ってきて、ネットで叩き落してぎっくり腰になりかけましたわ…。 しかーし、七転び八起き、変態的諦めの悪さが53UP、シニア化したワシの真骨頂。 昔は電撃瞬間湯沸かし器猪突猛進天上天下唯我独尊俺様一番なヤングでしたけど。 実は、その塗装による変化も予想していてコチラも準備してたんですわ。 これぞ究極のカルピスアベンタ、 即ち完全無塗装無コーティングのスーパーカルピス樹脂仕様です。 ま、白はホンマになんもしてません。トップコートすら。 接着面のバリも削ったそのまんま。 そして黒はなんと「源着」、即ち「塗装」ではなく、 樹脂原料の色を元から黒く染めたオーダー原料。 だから黒白、双方とも完全無塗装無コーティング。 一番上が塗装のブラックです。2番目が源着ブラック、 コイツはキテました。 当たり前だのクラッカーですが。 と、言うことで、完全無欠のカルピサベンタはこの2色のみ実現可能となりました。 無駄を限界まで排した、ビッグクローラーマニアに贈るこれぞ究極の実戦実釣仕様です。 えっ???だから何が違うねんて? そんなもん、あんた、全然違うに決まってまんがな。 塗装重量がなく比重もABSボーンより軽い圧倒的に軽いボディと、 塗膜がなく圧倒的に硬いボディー。 まずは決定的に金属音の ガシャガシャ摩擦反響音が全然違います。 音に関しては間違いなくアベンタシリーズ過去最高傑作です。 で、ここが肝心。 このカルピス樹脂の本領は スーパーデッドスローではありません。 スロー~デッドスローでこそ最強の レスポンスを発揮すると言う事。 もちろん、アベンタの売りであるピクピク級のスーパーデッドスローも 全く遜色ありませんし、むしろ最強に近いです。 しかしそれ以上に、デッドスロー~スロー(普通のクローラーベイトなら デッドスローに匹敵)に気持ちよく巻いたときにこそ、その真価は発揮されますね。 なんせ軽いんでスロー域での元気が格段にいい。 活き活きと羽根を高く上げ、まるで 塗装も弾くが「水まで弾くように」 ボワンボワンと泳いでくれます。 だから喫水が浅く羽根のキシャキシャ音が 抜群にええ感じに湖面に響き渡るわけ。 だから波気の多い琵琶湖でも、ロクマルにも十分 スロー&サウンドでアピールしたのかもしれません。 三原が「シェルラミの対極」と表現した理由がここにあります。 シャエルラミは「樽構造」でボディー側面に重量を加えてパワーのある 慣性復元力を羽根に活かす、水掴み重視のキラキラ、ピクピク系。 まあ、しかし、この無塗装無コーティングを販売するのはメーカーとして勇気が要ります。 一歩間違えば、何も知らないければ「完全な手抜きルアー」と思われても仕方ないですからね。 でも、コイツはある意味、プラスティック製ビッグクローラーベイトの、 ウッドをも超える究極の「漁具」としての最終形かもしれません。 ま、好きな人だけ一度使ってみてください。 |