K.imae Today's Tips 1544『ビッグベラー開発秘話(LNCディレクターズカット)。』
さて、今週はやっとの思いでシーズンギリギリにリリースOKがでた、イマカツルアーズ中でもひときわ目立つゲテモノ感?と 超絶キワモノ感を漂わす奇想天外系ルアー「ビッグベラー」について少し紹介しよう。 このビッグベラー、最初から最後まで三原に全権をゆだねて最後まで試作&テストを2年近くも繰り返した、三原虫に並ぶ 三原肝煎りの独創的ルアーだが、イマカツでも歴史に残る不遇の大名作になるか、はたまたエジソンかピカソ級の奇跡の天才ルアーなのか、 実はただの靴ベラだったのか、自分自身も今だその秘めたポテンシャルを完全には理解し切れない謎だらけの問題作だ。 ただ、三原だけは昨年の秋から春にかけて、他のルアーが全く効かない時に限って、 あの東条湖ですらビッグバスを何本も釣っているのもまた事実なのである。 振り返ること数年前、「ニコルス・ベンパーカーのマグナムスプーン」が琵琶湖で、池原で話題沸騰大したときがあったが、 カッコたる実績をすぐに誰でも出せたアラバマと違い、派手なデビューのわりに今やトンと噂やいい話を聞かなくなってしまったマグナムスプーン。 多くの人が「使い方が解らん」「重すぎてしんどい」と言った意見で、どうにもキワモノ路線からその真の実力が理解されたとは言いがたい。 自分も当時の話題沸騰(流行ではなく話題沸騰と言うのが真実)の折に、このマグナムスプーンに関してはいろいろ煮詰めて研究してみたが、 正直か感想はファーストインパクトこそ凄いものの、動きがイレギュラーとはいえバリエーションに乏しく単調なうえ、操作に関してもシンプルが故に、 使い手のテクニックで劇的な差が出るというよりは、「初物のファーストインパクトで最初は釣れた」と言うイメージが強かった。 それゆえにこのルアーを更にバージョンアップするのは難しいジャンルと考え、余り興味を持つことはなかった。 ところが、三原が東条湖で見せてくれた、自ら鉄の板を鍛造した奇妙奇天烈な形のビッグスプーンの動きを見た瞬間、 自分がかつて多大な衝撃を受けたあるルアーの動きを思い出した。 かつて、TOP50がワーム禁止の芦ノ湖で開催された折、芦ノ湖でシークレット的に使われているサイトスプーンがあるという情報をキャッチしたことに始まる。 そして、かなり入手困難だったそのルアーを入手し、テスト的に使ってみた瞬間、思わずウォ!!っと声が出るほどの衝撃を覚えた。 そのルアーの名は知る人ぞ知る、ビビルくらい一見、エエ加減過ぎるルアー、名前は更にエエ加減な 「グルグルX」と言う名の余りにもショボイ(失礼!)なスプーン?だった。 しかし、その余りもいい加減な見かけとは裏腹に、その動きは驚愕の一言だった。 一言で言えば平行姿勢でタイトロールしながら極めてスローに左右にジグザグと軌道を突然変えながらフォールしていく、まさに初めて見る動きだった。 これをプリプラ時の芦ノ湖がちょうどスポーン時期に当たったため、ワームの変わりにサイトで使うとベッドからみのバスは狂ったようにバイトしてきた。 ただ、このグルグルX、極めて残念なことにそれは、その性能的に1gと言う超軽量極薄金属板でしか実現できず、 極小のトラウト用シングルフックでしか、その完璧な左右ジグザグ切り替えしスライドロールアクションは出せなかったのである。 自分自身、幾度も似たものを作ってみたが、その軽さとカタチとバランスがベストマッチしなければ実現不能だったのである。 あくまで当時の常識では。TOP50芦ノ湖戦は、真剣にスプーンを研究するとても良い機会になった。 当時、「HUS-LURE(ハスルアーの名で有名だが、実はハスラー・博打打と発音するらしく、 POP-R=ポッパー的な米語的当て字である。)」も相当研究したが、これもなかなか面白いスプーンだった。 ルアーの歴史をよく知っているメーカーほど、かつて一世を風靡したUSオールドルアーに目を付け現代風にアレンジし、リブートしているものである。 三原が見せた手作りの初期型ベラーは、ベンパーカーのスプーンライクなアクションとは 明らかに一線を画す、まさにそのグルグルXのアクションを髣髴させたのである。 正確にはフォールはグルグルX、高速で巻くと「エバンス・クレイジーアクションロコルアー」的な クレイジーなフラッタリングアクションをプラスした感じだろうか。 当時は考えも付かなかった「常識外の大きさ」と、「非常識な厚みと凹み」が あの独特の重いのにスローフォールするジグザグロールアクションを再現させたのである。 それを見て、これはなにか奇天烈で唯一無二のビッグスプーンが生まれる予感がして、 自分は三原にこのベラーの開発を許可したのである。 三原はベラーにグルグルX系の単純なフォールアクションだけでバスを騙せるとは思っていなかった。 三原が更に拘ったのは、ジグザグスライドロールフォールに、使い手がロッドワークで意図的にフォール速度を変えたり、変則的な スピード変化を与えること、そして厳冬期でも8m前後をイージーにジギングスプーンとしてもスピーディーに使える「重さ」に拘ったのである。 開発途中、自分は「これって、あまりもデカすぎね?」と何度も言ったのだが、三原はこの3オンスと言う重さがないと、 「ビッグベイト」としての威力がなくなってしまうと、頑なにダウンサイズを拒んだ経緯がある。 ベンパーカーよりは一回り小さいのだが、重さはそれに匹敵することが、単にスプーンの延長ではなく、 ビッグベイトの延長にあたるビッグベラーならではの能力なのだと言い切っている。 自分的にはサンプルで作ったベラー130が一番使えそうな気がしたのだが…。 ビッグベラーには燐青銅製極薄ブレードが2枚、可変式で付いているが、 ロッドワークでこのブレードの回転抵抗とラインテンションを利用してベラーをジグザグフォールから、 突然のバックスライドフォールのようなアクションに変化させることが出来る。 慣れれば桟橋の奥へ滑り込ませるようにスライドインさせ、そこからジグザグロールで滞空時間を長く取った誘いも可能になる。 とにかく、このビッグベラー、従来のスプーンの大型化の延長でなく、単調なシャクリだけで使うルアーではない。 事実、三原は春~初秋にはベラーをドシャローで使うのである。先々週の池原ロケでは水深1mもないシャローで50アップを仕留めている。 渡辺も最後にバレてしまったが、七色ダムでは流れ込みの脇の水深1mもない浮きゴミの下で55cmクラスをサイトで掛けている。 一方で、ベンパーカーを愛用している琵琶湖ガイドのミックの小川ガイドは、 三原との琵琶湖テストで湖北10m水深で50アップを釣っているし、 メイホー仲ちゃんにいたっては夏のミックオーナーズシリーズ戦でベラーを使い5位入賞、 先日は湖北で瞬時に3本8キロ超えをマークしているが、これもスーパーディープである。 なんとも人によって使い方が様々すぎるのもまたベラーの奇想天外、難解、奇天烈極まる個性なのだろ。 ちなみにロッドは最低でもグラコブ、自分的にはワイルドスタリオン・バリアントか、 現在開発中の琵琶湖専用機種GS710XXHクラスが最も適していると思う。 |